千住博さんは、日本画家としてのキャリアに加えて、京都芸術大学附属康耀堂美術館館長や大学院芸術研究科教授、ヴァンクリーフ&アーペル芸術学校委員、徳川ミュージアム相談役など、多岐にわたる経歴を持つ方です。
彼の代表作の一つである「ウォーターフォール」は、日本画の伝統から逸脱し、余計なものをそぎ落としている独自のスタイルが特徴です。この作品を初めて見た時、日本画に対する私の先入観が覆され、アートには無駄なものがないことを再確認しました。
千住博さんが参加した座談会では、創造的な能力についての議論が繰り広げられました。特に興味深かったのは、「観察力から生まれる創造のプロセス」についてのお話です。
彼は、観察によって発見が生まれ、その発見が想像力を刺激し、最終的に創造力へとつながると語ります。他の参加者も、各自の分野において観察がどれほど重要かを強調し、観察力が創造力を育む基盤であることに共感を示しました。
例えば、音楽家である曽我大介さんは、ベートーヴェンが規則を打ち破り、新しい音楽の可能性を探る過程に勇気を見出し、それが創造力につながったと指摘します。同様に、将棋の羽生善治さんも、局面の観察と判断力がクリエイティブな手を打つ基盤となっていると語っています。
この座談会を通じて、異なる分野のアーティストたちが共通して感じるのは、「創造的な能力は普遍性を伴っており、観察力がその出発点である」ということでした。何かを創り出すためには、周囲の環境や情報を注意深く観察し、そこから新たな発見を引き出すことが重要なのです。
最終的に、創造的な能力が芸術や学問において発揮される際には、そのプロセスをきちんと伝えることが欠かせません。アーティストや学者は、自身の発見や考え方を丁寧に伝えることで、他者とのコミュニケーションを生み出し、新しい理解や洞察が生まれる土壌を築いていくのです。
観察から発見し、発見から想像力を結びつけ、最終的には創造力へと昇華する。千住博さんの言葉から、アートの奥深さとその根底にある普遍的な原理が浮かび上がります。これからもさまざまなアーティストや作品を通して、観察と創造の連鎖に感じ入り、新たな鑑賞の視点を開拓していきたいと思います。