尾形光琳のような輝きを:金箔と銀箔の基本テクニック

日本画において、金箔や銀箔は美しい作品を生み出すための重要な要素となります。尾形光琳が描いた紅白梅図屏風や伊勢物語 西の対図など、金箔や銀箔を使用した作品は数多く存在します。ここでは、金属箔の基本的な扱い方について紹介します。

尾形光琳

紅白梅図屏風

俵屋宗達

伊勢物語 西の対図

そうは思っても金箔とか銀箔とは金額が高いし?扱いが難しい!と思って中々手が出せない人がいると思います。

金属箔というものは、高いものから安いものまであります。使い方の基本がつかめていれば、それほど難しいものではありません。私は、はじめの頃、何枚かは失敗したことがありますが、慣れてくるとそうではありません。

日本画では、箔を貼ることを押す。今回は基本的な箔を押すことを紹介していきます。

主な金箔の種類と配合率

金箔にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる金属の配合率があります。以下に主な金箔の種類とその配合率を示します。

  • 純金箔: 金99.99%
  • 五毛色: 金98.91%、銀0.49%、銅0.59%
  • 一号色: 金97.66%、銀1.35%、銅0.97%
  • 二号色: 金96.72%、銀2.60%、銅0.67%
  • 三歩色: 金75.53%、銀24.46%
  • 定色: 金58.68%、銀41.31%

これだけでも様々な表現が可能です。また、純銀箔やプラチナ箔、真鍮箔、アルミ箔、錫箔なども存在します。

種類                 配合率(%)

純銀箔・・・・・・・・・・・・・・・・銀100%

プラチナ箔・・・・・・・・・・・・・・プラチナ100%

真鍮箔(しんちゅう)(洋金箔)・・・・銅85%・亜鉛15%

アルミ箔・・・・・・・・・・・・・・・アルミ箔100%

錫箔(すずはく)・・・・・・・・・・・錫100%

その他

青貝箔・赤貝箔・黒箔

・・・・・・銀を燻(いぶす)して色味を変えた箔

銀彩箔・虹彩箔など

・・・・・・銀箔やアルミ箔などに樹脂、顔料、染料などで着色した箔

箔を押すための準備

箔を扱う際には、箔あかしと呼ばれる作業が必要です。箔あかしには以下の道具が必要です。

  • ベビーオイル
  • 椿油、ベビーパウダー
  • 新聞
  • 箔箸(はくはし)
  • 馬連(ばれん)

金箔を使って説明します。箔は非常にもろいので、手では触らないでください。一枚一枚の箔には、箔合紙という紙が挟まれています。この箔合紙を使って、箔あかしをします。

はじめに金箔から箔合紙の取り出す方法を言います。

  1. 箔箸で箔合紙の角をさすって、めくり上がった所をつまみます。
  2. ちなみに箔箸や指先にベビーパウダーを塗っておくと箔が手や箸につかなくて作業しやすいです。
  3. 新聞紙にベビーオイルを二滴たらして、少しずつ馬連に浸み込ませていきます。
  4. しみこませた馬連を箔合紙に擦り油をなじませていきます。真ん中ばかりではなく端まで隅々まで浸み込ませます。
  5. 箔合紙に適度になじんだら、優しく金箔に乗せまるのですが、オイルを塗った側を裏返しにし、箔合紙の角と反対側の角を持って、乗せるときは、真ん中をたわませながら乗せると綺麗に行きます。
  6. 金箔に合わせ乗せたら箔箸で全面を押して密着させれば、完成です。

この場合、馬連にオイルを付ける量は、馬連にべっとりオイルが付けるのではなく、馬連の面がテカルくらいが適度です。一枚のシート状にして置くことで、使いやすくなります。

【箔あかし】

あかし紙を使用する場合

私は昔よくこの箔あかし用の紙を使い金箔を貼っていました。先ほどの馬連やオイルを用意しなくても、市販されている「あかし紙」を使うことで簡単に箔あかしができます。

箔あかしと言うのは、そのまま箔に乗せれば、簡単に引っ付いてくれる紙です。表面にロが塗っていて、ぬるっとした部分に引っ付く仕組みです。色付きの紙に挟まれたりして「つるつる」している面と「ぬるぬる」とがあります。「ぬるぬる」した面を金箔に乗せるだけで、箔が付いてきます。

箔押しの手順

  1. 最初の工程として、捨て膠をしていきます。前面に二回膠を塗ります。
  2. 箔を持つ時に箔箸、指先に粘りがあると金箔がひっつきやすくなり破れたりするので、ベビーパウダーを付けておきます。
  3. 金箔を押す際に利き手によってパネルの左上か右上どちらでも良いです。箔の大きさに測って、それより大きい幅に膠を塗りましょう。幅を大きめに塗ると箔が多少ずれても大丈夫です。ベタ塗でも箔が安定しなく良くないですが、少な過ぎても良くありません。
  4. 対角線上に箔の両端をもって、真ん中から静かにおろします。軽くなでたら空気を抜いてサッとあかし紙だけを取ります。
  5. 続いて最初に箔を押した隣に箔を押します。まず、膠を塗ります。最初に箔を押した箔に被るように隣に膠を塗って行きます。隣の箔の端5mmの部分から塗ってください。
  6. 膠を塗ったら、また、金箔を押します。先ほど押した箔に膠を5mm被せて塗った所に、新たに箔を被せて押してください。
  7. こうした工程を繰り返し作業をして、パネル前面に金箔を貼り付ける。
  8. パネルに金箔を貼っていくと、1枚分の箔ではなく半端な部分が残ります。そこで金箔を自由にカットしたいときにハサミを使います。そのままで普通のハサミで切ろうとすると、金箔がハサミにひっかかり切ることができません。そこでベビーパウダーをハサミに塗ってからハサミで切ると切りやすくなります。
  9. 前面に貼り終わって乾燥したら次の工程があります。乾いた柔らかい筆を用意して、表面をなでて余分な箔を取っていきます。余分な箔や接着できなかった箔を取っていく作業です。箔と箔が重なった部分が少し濃く見えると思いますが、これは箔合紙と言われる余分な箔は集めて別な用途に使います。張った部分に小さい穴が見つかったらその部分を補修埋めるのに役に立ちます。
  10. 全工程が終わったなら金箔を貼った所にドーサ液を引きます。それが終われば今度は絵を描いていく事になります。

     

    以上の手順で、美しい金箔の作品を作ることができます。箔合紙に残った箔は別の用途にも利用可能です。

    このようにして、金箔を扱う基本的な手順を把握することで、日本画の世界に新たな表現の幅が広がります。ぜひ挑戦してみてください。

     

上部へスクロール
PAGE TOP